ONDO

2025年冬の「韓国フェア」に向けて韓国フード文化を深掘りする旅に行ってきました

小林 佳奈

春の陽気が心地よい季節となりました。新年度を迎え、温泉道場ではさまざまな新しい取り組みがスタートしています。今回は、2025年冬に系列店舗で開催を予定している「韓国フェア」に向けて、フードテックラボのメンバーと行ってきた韓国視察の様子をリポートします。

温泉道場のフードテックラボとは?

フードテックラボは、各店舗の料理長を中心に構成された横断型のチームです。各店のコンセプトを活かしながら、地域性や季節感を大切に、食文化の魅力を伝えることを目指し、各店のグランドメニューや季節メニュー開発のサポートをしています。また、フードテックラボのモットーは「料理を通じて、地域の食材の良さや食文化を伝え、魅力を発信すること」。この取り組みは、温泉道場の企業理念である「おふろから文化を発信する/地域を沸かす」にも通じており、食の力で地域を盛り上げていくことを目指しています。
 


 

韓国視察の目的

2025年冬に店舗横断で実施する「韓国フェア」に向けた韓国フードの研究と、仕入れルートの開拓が今回の目的です。フードテックラボにとって、初めての海外フード視察となりました。実際に韓国の食文化や味覚を自分たちの目で体験し、その学びをもとにメニュー開発を行い、お客さまにワクワクをお届けします。

Day1|韓国フードの最前線を体感せよ!

朝4時の仁川空港で目覚めの糖分摂取! ドーナツを頬張りました。チェーン店の「Dunkin’ Donuts」ですが、韓国限定のフレーバーや、最近流行りの「ドバイチョコ」を使ったドーナツも販売されていました。



 

・アジアを代表するグローバル企業で食体験

ロッテウェルフード株式会社(以下:ロッテ)へ訪問させていただきました。この貴重な機会を実現できたのは、アテンドいただいた、流通経済大学の尹 敬勲(ユン・ギョンフン)教授のおかげです。先生には連日、同時通訳も行なっていただき、大感謝です。オフィスにはキッチンスタジオも完備されており、新ブランドとして展開されている、SICSA(식사 이론)の冷凍食品を中心に試食させていただきました。



ピカピカのキッチンスタジオ…!

・食を再定義するブランド「SICSA(식사 이론)」

「食べる」という行為ひとつ取っても、その意味や目的は人それぞれ異なると思います。栄養補給をメインに食べる方もいれば、美味しいものを追い求めて食べる方、また健康を意識して食べる方もいらっしゃいます。どの捉え方、価値観が「良い・悪い」ということではなく、人の数だけ食の捉え方は様々にあるのではないでしょうか。今回ご紹介いただいた、SICSA(식사 이론)というブランド名は、日本語に訳すと「食事理論」という意味です。このブランドが特に力を入れているのは、「健康」の視点からの食の提案です。


 
思い浮かべてみてください。健康食品を選んだとき、「あまり美味しくないけど、効果があるなら仕方ない」と自分に言い聞かせて食べたことはありませんか? 満腹感は得られても、満足感は得られず、結局長続きせずに別の選択肢に手を出してしまう。そしてまた食べなくなる…。そんな「負のサイクル」に陥りがちですよね。ちなみに、私は何度もこんな経験があります。

でも、SICSAの商品は美味しいのです…! 「体にいいから食べよう」という義務感ではなく、「美味しいからまた食べたい」と素直に思える。そんなふうに、“楽しく食べながら健康も意識できる”という新しい食のかたちを体感できた商品でした。

冷凍食品とは思えないクオリティのマンドゥ(韓国餃子)、キンパ、トッポギ。すでに日本で取り扱われている商品から、まだ未発売のものまで、幅広くご紹介いただきました。試食会での話題は、韓国と日本の餃子の調理方法の違いにまで発展。日本では「焼き餃子」が主流ですが、韓国では「蒸し焼き」が一般的とのこと。そして、キムチ入りのマンドゥは韓国ではとてもポピュラーな存在だそう。

実際に食べてみると、火を吹くような辛さ…!「机の上にたくさん水が多く置いてあるな〜」と思っていたのですが、その理由がここでわかりました。日本人向けにローカライズされていない、リアルな韓国の“食”の一端を体験できたことも、とても貴重な経験でした。

レンジで簡単に作れるトッポギは、別日に明洞の屋台で食べた出来たてのトッポギと比べても遜色ない美味しさ! 手軽さと本格さの両立に驚きました。ロッテの社員の皆さまはとても親切で、夕食時には「とにかくタコ料理を視察したい!」という私たちのリクエストに応えて、おすすめのタコ料理専門店を教えてくれました。


こちらはロッテの正面玄関にあった、巨大なチョコアイスのオブジェと山﨑さん。かなり目立つ位置にあるので、きっとロッテにいらした方は皆さん写真を撮るのではないかと思います。ちなみに、山﨑さんとオブジェシリーズはもう一つありまして…また一つお気に入り写真が増えました。ハピネス!


 

・「パンチャン(반찬)〜おもてなしの文化〜」を体験

1日目の夕食で行ったチュダム市役所北昌店では、タコ料理とサムギョプサルを食べました。特に、エビのチヂミはパリパリで絶品でした。

メイン料理と共にずらりと並ぶたくさんのおかず。これは「パンチャン」と呼ばれる、韓国ならではのおもてなしの食文化なのだそうです。

食材の組み合わせが豊富で、ひと口ごとに違った味の変化が楽しめるのが印象的でした。ひとつの料理でも、口の中でさまざまな味わいが広がっていく体験がとても新鮮で面白かったです。

ふと横を見ると、お皿を手に取り、裏面のメーカーを真剣にチェックする人たち。これは「温泉道場のメンバーあるある」で、視察に行くとつい、食器の裏を見たり、ホテルのベッドや家具のメーカーを確認したりしてしまうんです。もはや見慣れた光景ですが、韓国でも健在でした。

 

Day2|韓国のカフェ文化をリサーチせよ!

2日目は韓国の食のトレンドを探る視察を中心に行いました。まず訪れたのが、ソウル市内の安国(アングック)にあるベーカリー「onion」。このベーカリーは韓国の伝統的な住居である、韓屋(ハノク)をリノベーションしたお店です。平日の朝にもかかわらず、すでに行列ができるほどの人気店でした。


日本でよくみかけるパンよりも、一回り大きいものが多く、見た目も含めてとても、写真映えするように感じました。白い山のようになっているパンは「Pandoro(パンドーロ)」という商品。白い部分はクリームではなく粉砂糖です。口にいれた瞬間に、ふわっと甘さが広がり、たまらない美味しさ。

・オルジュガ(얼죽아)〜凍え死んでもアイスアリカーノ〜

韓国に来て、カフェの多さとアイスドリンクのバリエーションの豊富さに驚きました。コーヒーの消費量が非常に多いことも影響してか、カフェ文化も発達している印象をうけました。日本ではあまり見かけないビックサイズのドリンクを片手に観光している方も多く、テイクアウト専門のコーヒーショップやドリンクスタンドが至るところにありました。空港でも職員の方がデスクに大きなドリンクを置いて仕事をしている姿が。

余談ですが、当日は少し肌寒く感じる時間帯もあったのですが、それでも大体の方がアイスドリンクを手にしていて、「どうしてこんなに冷たい飲み物が人気なんだろう?」とふと気になって調べてみました。

韓国には昔から伝わる面白いことわざがあるそうです。
「이열치열(イヨルチイェル)」=“熱には熱で対抗する”
「이냉치냉(イネンチネン)」=“冷たさは冷たさで治す”

たとえば、暑い日にはあえて熱々の参鶏湯(サムゲタン)を食べてしっかり汗をかき、体の熱を逃がす。寒い日には暖かい部屋で冷たい冷麺を食べて身体のバランスをとるーー。気温や季節に逆らうようでいて、実は体の内側から体調を整えるための知恵だそうです。日本でも夏の土用の丑の日に、あえて熱いうなぎを食べる文化がありますが、ちょっと似ているなあと感じました。

また、寒い日でもアイスドリンクを好んで飲む韓国の文化には、もうひとつ理由があるようです。ことわざ「이냉치냉(イネンチネン)」の考えに加えて、若者たちの間では「얼죽아(オルジュガ)」というスラングもあるのだとか。これは「凍え死んでもアイスアメリカーノを飲む(얼어 죽어도 아이스 아메리카노)」の略で、それほどまでにアイスドリンクが愛されている証拠なのかもしれません。

おしゃれなカフェや、ショッピングエリアが集結する聖水(ソンス)でもカフェ巡りを行いました。

いちごがたっぷり入ったミルクレープに、ボトル入りのミルクティー。見た目もとってもかわいらしくて、思わず写真を撮りたくなるビジュアルです。しかも、見た目だけでなく味もちゃんと美味しい…! 心をぐっと掴まれてしまいました。

「LAZY YOGURT」では、グリークヨーグルトをいただきました。水分が少なく、もっちりと濃厚なヨーグルトの上には、彩り鮮やかなフルーツがたっぷり。あっという間に食べ切ってしまいました。

・進化する韓国料理:定番料理から進化系まで体験

2日目は思い返しても、とにかくずっと食べていました。日本でも馴染み深くなってきた定番の韓国メニューから、進化している伝統食まで一気に体験しました。明洞にある「大家(テガ)」ではサムギョプサルや、カンジャンケジャン、海鮮鍋などの定番を注文。

ついさっきまで水槽で、すいすーいと泳いでいたタコ……。迫力満点。

さらに、伝統的な韓国料理も常に進化しているということで、スンデ(韓国風ソーセージ)をステーキとして提供している「スンデシルロク三成店」へ。

香ばしく焼き上げられたスンデは、とても食べやすく、初めてでも抵抗なく楽しめる味でした。そしてもう一品オーダーしたのが、スンデスープ。これがまた絶品で、スープのコクと旨味に思わずほっとする一杯でした。印象的だったのは、スープの味変として添えられていた「アミエビの塩辛」。これを加えることで、自分好みの塩加減に調整できるのですが、不思議と塩辛を入れると味がスッキリとまとまり、さらに飲みやすくなるのが驚きでした。

尹先生いわく、「日本人が焼きそばに紅生姜を添える感覚に近いかもしれませんね」とのこと。「その感覚、分かるかもしれない…!」 個人的には、紅生姜のために焼きそばを食べているといっても過言ではないほど、生姜が好きなので、比喩に出してもらえてなんだか嬉しい。

さらに足を伸ばして、観光スポットとしても人気の「現代百貨店」へ。お目当ては、「GAZIGAZI」のキンパ(韓国の海苔巻き)。とはいえ、日本で最近見かけるようになったキンパとは少し違い、一口サイズでとても食べやすいスタイル。見た目も可愛らしく、ついつい手が伸びます。

「韓国料理」と一括りにしてしまいがちですが、現地で実際に体験してみると、そのバリエーションの豊かさや進化の速さ、そして奥深さに感動していました。伝統的な味だけでなく、現代風にアップデートされたスタイルにも魅力が詰まっていて、面白いですね。



 

2日目の締めくくりは、しっかり満腹のまま(笑)、屋台グルメやスナック・インスタント食品のリサーチへ。お腹に余裕がなくても、目にするとつい手が伸びてしまうし、気づくと食べてしまう…これが屋台の魔力。


 
出来立てのトッポギと熱々のおでん&うれしそうなおふろcafé 白寿の湯料理長の良さん。


 
辛ラーメンのポップアップエリアでは、おふろcafé ハレニワの湯料理長の薄田さんと良さんが即席ラーメン作りに挑戦。すでにお腹いっぱいのはずなのに…まだ食べられるの、ほんとすごいです…! 「この機械ほしいよね〜」と、なにやら作戦会議をしている姿も印象的でした。


 

Day3|韓国の食文化の真髄にふれよ!

あっという間に3日間が過ぎ、最終日を迎えました。最終日もしっかりとフード視察を続けます。この日は温浴視察も兼ねて仁川方面へ移動。道中、立ち寄った「キョンボクグンサムゲタン松島店」では、エゴマの風味がしっかり効いたとろとろの参鶏湯を堪能しました。

周りのお客さまを見てみると、右手にスプーン、左手には緑の野菜。あれは……唐辛子!? セルフサービスのテーブルには、巨大なキムチと、辛さが異なる2種類の唐辛子(辛いもの/辛くないもの)が並んでいました。



 

スープの味は非常にシンプルであっさりしているのですが、塩気の効いたキムチや香り高い唐辛子を交互に食べることで、絶妙なハーモニーが生まれました。日本の「口中調味」に通じるような感覚で、親近感が湧きました。


 

恐る恐る、唐辛子をかじる薄田さん。…セーフ! この唐辛子は辛くなかったようです。

・オモニの味で、食べ納め

最後の食事は、「真味食堂(チンミシッタン) 」へ。ここで食べたキムチが絶品でした。シャキシャキとした食感の白菜キムチと、エゴマのキムチ。どちらも美味しすぎて、思わずおかわりしてしまいました。


 

地元の方がメインで利用されていそうなお店の様子で、私たちの後に入店された方は、席についた瞬間に料理が提供されていました。どういう仕組み!?

キラキラの冷麺に、鮮やかなチゲ。



 

お酒の提供方法もユニークで、マッコリはグラスではなくアルマイトの器で提供されました。一味違った雰囲気を楽しむことができました。


 

食事が進むにつれて話題は帰国後のフェアに向けて、どのようなラインナップを揃えるべきかという話で盛り上がっていました。コンセプトの異なるおふろ屋さんを運営している私たちだからこそ、それぞれの場所でお客さまに届けることができる商品もきっと変わるのではないかと思います。

・「美味しさ」のバックヤードへ

いよいよ韓国での時間も終わりを迎え、最後に訪れたのはロッテマート。3日間の視察で得た情報が豊富だったため、スーパーの陳列商品やお目当ての食材から得られるインプットが非常に深くなっていました。HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)マークの認証が取れいている商品陳列が非常に多い印象でした。青菜一つとっても種類が豊富です。


冷凍食品の種類も豊富で、初日に訪れたロッテの商品も発見。飛行機で持ち帰れる商品がいくつかあり、メニュー開発に向けて商品を購入しました。吟味しているうちに、気づけば1時間半ほど滞在してしまいました…!

食だけじゃない! 「おふろ」視察へ

フード視察の様子をメインにお届けしてきましたが、本業である「おふろ」の視察も、もちろんしっかり行ってきました。まずは、明洞にある韓国式アカスリが体験できる「黄金サウナ」。続いて、海水を使用したミネラルたっぷりの「松島海水温泉・松海温」。さらに、カジノも併設された「パラダイスシティ」内のスパでは、チムジルバンから本格的なスパまで幅広いリラクゼーション施設を体験しました。



積み上がる即席ラーメン。カラフルでインパクトがありますね。

視察を終えて

温泉道場のクレドの一つに、「本物を届ける 〜お客さまにおもてなしと感動を」というものがあります。日々お店に来てくださる皆さまに、「このお店を選んでよかった」と思っていただけるサービスを届けるためには、まず自分たちが本場で体験し、見て、聞いて、リアルに感じることが何より大切だと考えています。

今回の視察を通じて、実際に体験したからこそ気づけたこと、認識が変わったことがたくさんありました。韓国の文化や食文化の奥深さ、日本との共通点や違い、どれも体験しなければわからなかったことばかりです。

私たちのお店でこの冬に開催する「韓国フェア」を通して、韓国に興味を持ち、実際に足を運びたくなるようなきっかけになれば嬉しいです。私たちの掲げる“地域を沸かす”というビジョンが、国を越えて、韓国の地域でもそっと火を灯すーー、そんな未来を思い描いていけたなら素敵ですね。

<お知らせ>
各店では2025年5月31日まで「石垣フェア」を開催中です。実際に石垣島を訪れて集めた食材で美味しい料理を提供しています! ぜひ訪れてみてください。

小林 佳奈KANA KOBAYASHI

Department
(株)温泉道場/管理部
Position
室長

埼玉生まれ、埼玉育ち。就職活動時期にbivouacへ訪れたことで、温泉道場に興味を持つ。昭和レトロな玉川温泉での勤務を経て、現在はHR&カルチャー室に所属。幼少よりピアノを習う。大学では、コミュニケーション文化学を専攻。イギリスの文化に興味をもち、イギリスの音楽について研究を行う。座右の銘は「好きこそものの上手なれ」将来は芸術文化に携わって生きていきたい。

RECOMMEND

同じカテゴリの記事一覧

RANKING

CONTACT

ONDOでは、地域活性に関する事業や、施設運営のご相談、
ともに地域を沸かしたい方からの採用のお問い合わせなど
随時受け付けております。
どうぞお気軽にお問い合わせください。