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地域を沸かす新たなビジネスモデルを目指して。「湯河原温泉 おふろcafé HITOMA」が12月8日にオープンします

小林 佳奈

11月になり吸い込む空気の冷たさや、波のように広がるウロコ雲に冬の訪れを感じるようになってきました。そんな冬支度の片隅で、温泉道場でも新たな取り組みがスタートしています。

The Ryokan Tokyo YUGAWARA 内に完全予約制のおふろcafé「湯河原温泉 おふろcafé HITOMA」が12月8日オープンします。おふろcafé HITOMAは、「旅館×おふろcafé」「完全予約制」という、新たな運営方法に挑戦しています。今回は、HITOMAの開発に際してプロジェクトマネージャーを務める白石さん、The Ryokan Tokyo YUGAWARA 支配人の山﨑さんをお招きして、ブランドへの想いなどお話を伺っていきます。

地域を沸かす新たなビジネスモデル“HITOMA”

――リニューアルオープンに際して「HITOMA」という新たなブランドを立ち上げることをお伺いしました。改めて、このブランドに込めた想いや背景を教えていただけますか?

白石:まず、「HITOMA」はおふろcaféの派生業態として開発しました。これまで展開してきた「おふろcafé」での過ごし方やライフスタイルの提案とは異なる業態となります。背景として私自身の日本の観光産業・宿泊業への課題感ともつながっています。

――なるほど、白石さんからみた課題感という点がとても気になります。くわしく教えていただけますか?

白石:かねてより、旅館業の倒産は地域経済の衰退に直結するのではないか?という課題感を感じていました。日本には約4万軒前後の旅館があるとされています。そのうち大多数が小規模な経営で運営されています。 加えて地方旅館では、経営者の高齢化・資金調達の難度の高さ・雇用力など、数々な課題を抱えながら経営を行っていることが多いです。

そうした過半数を占める旅館群がひとたび経営難に陥ってしまうと、飲食の仕入れやリネン、雇用の継続等、地域経済全体へ与えるマイナスのインパクトも大きなものとなります。だからこそ、「HITOMA」というブランドを通して、「小規模な旅館の経営であっても事業を継続できるようなビジネスモデルをつくること」にチャレンジしていきたいと思っています。

――新たなビジネスモデルを作ろうとされているのですね。「おふろcafé HITOMA」が、そういった課題感を解決できると思われた背景についても教えていただきたいです。

白石:先ほどお伝えした課題感をつなげていくと、小規模旅館では概ね、資金面からも建物の改修や増築の難易度が高く、多くのお客さまの受け入れをすることが困難であり、「集客数を最大化して売上をあげる」ことがとても難しいです。だとすれば、既存の空間の中で収益性を高めていく方法を考えていくしかない。この課題に向き合った先に、完全予約制のおふろcaféを併設する方法に行き着きました。

従来の旅館業のビジネスモデルは、決まった部屋数の中でいかに効率よくお客さまを収容できるかという点を起点としています。要は、一部屋あたりの客単価を上げていく方法を主な考え方としているのです。一方で「HITOMA」で提案したい考え方は、予約制のおふろcaféを併設することで、館内の滞在人数を絞りつつ、収益性を担保していく方法を提案しています。

1.8mからうまれる。旅館のライフスタイル

――ありがとうございます。ここまでは、「旅館業」をいかに盛り上げるか。という視点にフォーカスしていただいていましたが、お客さまへお伝えしたいメッセージとしては、どのようなものがありますか?

白石:元々、The Ryokan Tokyo YUAGWARA(TRT)では、執筆活動や制作活動に従事されている方のご利用が多い傾向にありました。「文豪の町=湯河原」そんな町の歴史に抱かれながら、ゆとりのある空間と時間のなかで、制作活動に没入していただきたいという想いがあります。また、玄関口として「HITOMA」が存在することで、創作活動の楽しさに目覚めるお客様が増えたり、未来のクリエイターが生まれたり。そんなストーリーが紡げたらとても嬉しいですね。

――ブランド名にもこういったメッセージが組み込まれているのでしょうか?

白石:はい、そうです。「HITOMA」というブランドの名は「日と間」からインスピレーションを受けて名付けました。お客さまに一日のうちのひと時を、ゆっくりと過ごしてほしいという思いが込められています。また、ロゴには頭文字の「ひ」をタイポグラフィーとして起用しています。こだわりのポイントは湯気のようなフォルムと、文豪の町にちなんでインクで書いたようなタッチにしている点です。

――たしかに、ロゴを拝見したときに視覚的にもゆとりがあるような印象を受けました。ちなみに、「日と間」という言葉を初めて耳にしたのですが、どのような由来があるのですか?

白石:「日と間」の由来は、畳の面積を計る単位として用いられている「一間(いっけん)」からインスピレーションを受けました。一間の広さが約1.81mと言われていて、「HITOMA」でもお客様同士の距離は1.8mを保つように設計されています。
先ほどの課題感ともリンクしてきますが、大人数の受け入れが難しいからこそ、創作活動や湯治として利用されることの多いクリエイターやフリーランスの方々が、「利用しやすい!」と思える空間を提供していきたいです。あとは、旅館って一人で使用しづらい雰囲気があったりするじゃないですか。ああいう雰囲気も変えていきたいですね。

――1.8m…意識したことがなかったですが。たしかに近すぎず、遠すぎず。自分の時間に集中できる絶妙な距離感ですね。

土地が持つ文脈を伝える

――「HITOMA」のコンテンツとして、オリジナルインク作りがあると伺いました。こだわりポイントなどお教えいただけると嬉しいです。

白石:書くまでの一連の流れを楽しんでほしい。そんな想いからお客さまにはインク作りから体験いただきます。色の組み合わせは無限大で約900色以上のインクを作り出すことができます。またインク作り体験は、写真家・コラムニストの古性のちさんとコラボレーションさせていただきました。実は、のちさんが名付けてくれた「色名」が5色あります。いずれも身の周りの景色に色がつくような、感性豊かなことばたちが紡がれているのでぜひ注目していただきたいです。

さらに、体験を通じて私たちが成し遂げたいことは、「土地がもつ文脈を伝えること」です。インク作りという体験を通じて、「湯河原町」が明治時代の文豪たちにとって執筆の聖地であったことや、ひいては日本古来の和歌集である万葉集の中で湯河原の土地が謳われていることなど。湯河原という土地がもつ歴史的背景もお伝えしていきたいと思っています。

――自分が創り出した色を透して、湯河原に思いを馳せる…とてもすてきな企画ですね。ほかにもこだわりのサービスなどありますか?

白石:そうですね。クリエイターの方々に集中して執筆活動や制作に取り組んでいただくために「おこもり部屋」を新設しました。スタンドライトやタイプライターキーボードなど、お役立ちアイテムも揃えています。さらに、制作のお供に欠かせない食事もこだわっています。従来の喫茶メニューに加えて、湯河原で獲れた新鮮な魚やお肉を使用した3種類のお茶漬けをラインナップに追加しました。出汁の地味深さや、食材の旨みなど。味覚からもゆったりとした時間を体感いただきたいです。

浮遊感と壁。新店立ち上げの心構え

――白石さんありがとうございました。ここまでは想いの部分を伺ってきました。ここからは実際に開業に向けて準備を進めていらっしゃる、山﨑さんにもお話をお伺いしたいと思います。新店の開発に携わることになった経緯や、山﨑さんのこれまでの歩みについてもお教えていただけますか?

山﨑:私は、2020年に新卒で温泉道場へ入社しました。最初に配属された店舗がときたまひみつきちCOMORIVERという宿泊施設でした。もともとパンが好きで、いつかパン屋さんを経営してみたいなと思っていました。ちょうどそんな折に機会があり、小麦の奴隷 ときがわ町店の新店立ち上げに責任者として携わりました。パン屋さんが軌道に乗り始めてからは、おふろcafé 白寿の湯(埼玉県神川町)のおふろ屋さんでの勤務を経験しました。そして、いまはThe Ryokan Tokyo YUAGWARAで「チャレンジ支配人制度」という制度を利用して、支配人業務にチャレンジしています。

――支配人として、今回の開発ではどのような役割を担っているのしょうか?

山﨑:今回の「HITOMA」の立上げでは、クラウドファンディングの準備や、メニュー開発、体験コンテンツの作成、予約プランの作成や、空間ディスプレイつくり、売店商品の選定など行なっています。最近2年目のときと、今とで「共通点と異なる点」があることを実感しています。共通点は、準備期間はフワフワした浮遊感を感じていることです。オープンしてからは目まぐるしい日々が、やってくると思うので今以上に大変さは感じると思います。

異なる面でいうと、「小麦の奴隷」はフランチャイズ店舗の立ち上げだったので、コンセプトや商品設計もある程度決まっていました。今回は、コンセプトやサービス設計、オペレーション作成に至るまで自分たちで0〜1で作っています。そのため、指標探しのためにも、私の時間の使い方もインプットに当てる工数が多くなっています。展示会を観にいったり、イメージに近いコンテンツを探し回ったりしています。正解がない中で道のりを決めて、切り開いていくという面では、前回よりハードルの高さを感じました。

――「浮遊感」という言葉が気になったのですが、準備期間とオープン後とでかなりギャップを感じそうだなと感じました。この辺りはどのように乗り越えていますか?

山﨑:正直、私は「やってみないと分からない」と思っているので、まだ答えがない中で、あれこれ考えても仕方ないと割り切っています。実際は始まってみて、「なんだこれ…!」と思うような壁にもたくさん出会いますが、そのこと自体が楽しいなと感じています。

――すごいですね! 見方によってはストレスが多い環境に見えますが、あえてそういった環境を求めていらっしゃるのですか?

山﨑:そうですね、私は同じ作業を繰り返すのが得意ではないので、新しいことに常にチャレンジできる環境が好きですし、そういう意味でも新店立上げは楽しいなと感じています。

――メンバーやスタッフの皆さんへの、コミュニケーションとして工夫していることはありますか?

山﨑:共通認識をもってお店をつくることをすごく意識しています。小麦の奴隷立ち上げのときの気づきも活かしながら、オープニングのスタッフさんが多い新店立ち上げでは、店舗コンセプトや、私たちのお店が何を目指しているのか。幹となる部分はしっかり伝えていくことが大事だなと思っています。

――正解がない中でも楽しんでいく姿勢や、メンバーへ道標を伝え続けること。いずれも「新店舗立ち上げ」の心構えとしてポイントになりそうですね。

HITOMAの未来

――最後に「HITOMA」はどのようなお店にしていきたいですか? 展望などあればお聞かせください。

山﨑:白石さんが仰っていたように、小規模店舗にとって参考になるようなお店作りを目指していきたい。その想いは変わらずありますが、個人的には、店舗のメンバーがHITOMAのサービスや店舗のことが好きで、運営している。そんな、お店を作りたいです。残念ポイントがないお店が作りたくて。店舗運営をしているなかで、サービスや改善点に対して、妥協せずメンバー全員が当事者意識を持って取り組めるようなチームを作りたいと思っています。施設に対する愛情をもって、お店を創っていきたいと思います。

白石:HITOMAのビジネスモデルは、さまざまな地域で応用が効くと思っています。私の目標としては湯河原以外の地域でも取り組みを広めていきたいと思います。また、日本は課題先進国です。将来的にこの考え方は海外でも求められるようになると考えているので、海外でも展開できる未来がくると信じています。その日まで、この新たなブランドを大切に育てていきたいと思います。

――白石さん、山﨑さんHITOMAにかける想いなどお話いただきましてありがとうございました!

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夏目漱石も愛した神奈川・湯河原。想像力を掻き立てる旅館の新しい「湯ごもり」体験。

 


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小林 佳奈KANA KOBAYASHI

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室長

埼玉生まれ、埼玉育ち。就職活動時期にbivouacへ訪れたことで、温泉道場に興味を持つ。昭和レトロな玉川温泉での勤務を経て、現在はHR&カルチャー室に所属。幼少よりピアノを習う。大学では、コミュニケーション文化学を専攻。イギリスの文化に興味をもち、イギリスの音楽について研究を行う。座右の銘は「好きこそものの上手なれ」将来は芸術文化に携わって生きていきたい。

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